マロン爺の書斎

小説や考えごとをのんびり綴っています。今日も書斎で思案中。

Kaoriに包まれたい:15

マロン爺

第15話 『想いを選んだ日』

 

私は、今まで聞けなかったことを香織さんに追及を始めた。

 

「香織さん、なぜ、あの日。車で送ってくれたんですか?」

「それは、上司として部下が困っているのを見過ごせなくて……」

「……」

「ほら、私、仕事に厳しいって噂だし…」

 

香織さんは苦し紛れの言い訳をしているようだった。

 

「じゃぁ、私をトレッキングを誘ったとき凄く嬉しそうでしたよ」

「あれは…その…ほんとに一人じゃ、寂しかったので…」

「うそだ……」

「え……」

 

いつもの冷静な香織さんではなくなっていた。

私の気持ちは、今までの思いがあふれて止まらなかった。

 

香織さんは、うつむいた。

 

「トレッキングアイテム購入のデートの時、中止のことだけ伝えて、なんで、後から何も連絡してくれなかったんですか!?」

「……」

「香織さん、答えてよ!」

「……ごめんなさい」

 

もう一度、香織さんからもらったネームプレートをバックから出した。

 

「この、Kaoriのネームプレート。私が、トレッキングを始める記念で、香織さんからもらったのを覚えてる」

 

香織さんは私の掌にのせた、ネームプレートを見つめた。

 

「香織さん」

「……」

 

「ネームプレート…トレッキング…車で送ってくれたのも……

全部…期待するじゃないですか…!」

 

うつむく香織さんから涙が一つ落ちた。

 

「香織さん…私に優しくするくせに、どうして何も言わないんですか!」

「……」

「自分の気持ちにセーブかけてませんか?」

「!」

 

香織さんは、うつむいていた顔を私の方へ向けた。

 

「違う、かけてない!」

「じゃあ、香織さんの好きな人、言ってください」

「……」

「もう、いい!ずっと、そうやっていればいいのよ」

 

私はバックを持ち、思わずベンチから離れた。

そして、香織さんに振り向き、

「私は…香織さんが好き、大好き!二年前からずっと」

「!!」

「あの雨の日は、すっごく嬉しかった。ずっと香織さんのそばに入れたから。凄く嬉しかった」

「智美ちゃん……」

「それなのに…なのに…」

 

私は、涙が止まらなくなった。

 

香織さんの答えは最後まで聞けなかった。

でもいい。

私の素直な気持ち。

香織さんに直接言えた……

陽菜ちゃん、私、頑張ったよ……

 

私は香織さんに背を向け公園から出口に向かった。

 

「智美ちゃん…智美、待って。私、言うから!」

「……」

「私も二年前から智美が好きだったの。でも、それが恋って分からなくて。それを教えてくれた人がいた。智美に恋しているって…」

 

「え……」

私は立ち止まった。

 

「智美。私は智美が大好き。私と智美は上司と部下。

それに社内恋愛。そればかり考えて心にブレーキを……

ごめんなさい……」

 

「香織さん……それ、本当ですか?」

「本当。大好きな智美にウソなんて言わない」

 

私は香織さんに振り向き、

「香織さんの好きな人は誰ですか?」

「何度でも言うわ。智美。私の大好きな智美」

 

「香織さん……」

今までの記憶が走馬灯のように巡り、

香織さんへの想いが溢れた。

 

 

同時に涙も溢れ、香織さんに向かって走り出した。

 

「香織さんっ……!」

 

そのまま、香織さんに飛び込むように抱きついた。

香織さんも私をきつく抱きしめた。

 

「智美……」

「香織さん……」

「もう、智美を離さない……智美」

 

香織さんから、私を包み込むような優しい香りがした。