Kaoriに包まれたい:16

第16話 『二人のはじまり』
香織さんの腕の中は、思っていたよりもずっと温かかった。
「香織さん、大好き…」
「智美、私だって大好き…」
私たちは、ゆっくり離れ見つめあった。
「智美。帰ろうか」
「うん。帰りは香織さんの車がいい」
「もちろんよ」
私たちは会社の最寄り駅である白瀬駅へ。
香織さん。
私、香織さんの人になれたんだよね…
大丈夫なはずなのに、香織さんの横顔を何度も見てしまう。
それだけで、少しだけ安心できた。
私たちは電車に乗り、香織さんの地元、月見坂駅へ。
そこから歩いて、香織さんの住む低層マンションへ向かった。
ここを歩くのは二度目。
あのとき――
香織さんの好きな人を聞いて、
勝手に私じゃないって決めつけてしまった。
……それが、私だったなんて。
今では、少し前でも懐かしく感じる。
「ねえ、家に帰る前に海によらない?」
「わぁ!いいんですか」
香織さんの家に着き、駐車場で車に乗り換えた。
そのまま、海へ向かう。
しばらくして、車は海の近くで静かに止まった。
二人は黙って海岸へ向かって歩いていった。
手を伸ばせば、香織さんの手に届く。
……つないでしまったら、私たちの物語が終わってしまう気がした。
でも、
そんなこと言ってたら…!
私は勇気をだし香織さんの手を握った。
香織さんも握り返し、私に振り返り微笑む。
「ありがとう」
「……うん」
時々、冬の冷たい風が吹き抜ける。
「寒い?」
「うん、ちょっとだけ」
そう言うと、香織さんはそっと私の肩を抱き寄せた。
香織さんの心のぬくもりも伝わってくる。
「ありがとう」
「……うん」
砂浜に寄せては返す波の音……
それは、終わることなく続いていく気がした。
……まるで、私たちの運命みたいに。
「智美、帰ろ…」
「うん…」
香織さんと車に戻り私の家へ向かった。
今の時間が、ずっと続いて欲しかった。
でも、来週からは同じ課で、同じ職場で過ごすことになる。
どうするの…香織さん…
しばらくして私の家に着いた。
「香織さん、今日は本当にありがとうございました」
「智美、私の方こそ、ありがとう。嬉しかったの」
「香織さん、私、ちょっと心配なことがあって……」
「え、どんなこと?」
「私たち、これから、会社で、どう振る舞えばいいか……」
香織さんが一瞬だけ何か考えるような表情を見せた。
香織さん……
「そうね…どう振る舞うか、か…」
香織さんは真剣な面持ちで考えていた。
「智美、大丈夫よ。心配しないで。いつも通りでいいの」
「そうですね!」
私は半分、心配しながら返事をした。
車を降り香織さんに挨拶。
「香織さん。気を付けてくださいね」
「智美もね」
私は香織さんの車を見送った。
香織さんと結ばれた気持ちが、優しく私を包んでいた。
第四章 ― 智美の決心 ― 完
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